はらたいらのパソコン漫遊記

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価格:¥ 1,260
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■ 内容紹介

出版社/著者からの内容紹介
 博識で知られる一方、「機械おんち」を自認する漫画家はらたいらがパソコンに挑戦。慣れないキーボード操作やペンタブレットでの漫画描きに悪戦苦闘! パソコンの前に座っているだけでなく、持ち前の好奇心を発揮してパソコン工場にまで乗り込んだ!


抄録(「電子書店パピレス」より)
 パソコンにしごかれた

 たたけども たたけども なおわがソフト楽にならざり じっと手を見る
 石川啄木の有名な歌をもじった、まさにそんな心境だった。編集部のK氏が、「絵はそろそろ卒業して、他のソフトに移りましょう」とタイピングの練習ソフトを、私のパソコン(ゲンペイ)に無理矢理さしこんだ。
 まずは和文で、「あかさたや行」から練習だという。見なれぬ文字が画面いっぱいに広がった。「D」と「K」に小さなポッチがついている。そこに両手の中指を置く。この中指がこれから始まるタイピングの中心らしい。
 なぜ中指なのか? 五本の指のまん中にあるから……あるいは、指で敏感な順をあげていくと、中指、人差し指、親指、薬指、小指の順番だといわれているからか!
 とにかく初心者にとっては、今はそんなことはどうでもいいことだ。K氏のいいなりになっていれば何とかなるだろう。
 ところがそれは甘い考えだったことにすぐに気づかされた。ゲンペイから指示される字を打つのは私自身でしかないのだ。
 K氏は、私の側でその下手さかげんにあきれかえっているようすだ。エラー、エラーのオンパレード。「漫画を描くのですから、手は器用だと思っていましたが……」
 冗談じゃない。私ほど不器用な人間はいないのだ。ソロバンだって、まともにはじけないし、箸の使い方だって思うようにならない。ゴツゴツした、いかつい手には、たしかにペンを持ってはいるが、漫画は頭で描くものだ。それならばとK氏の顔は、頭でタイピングすればいいではないかといいたげであった。
 「手元を見ずに画面を見ながらやってください」
 簡単にそういわれても、押し間違いや、二個いっしょに押したりのエラーの連続である。頭でタイピング。浸画は頭でなんていわなきゃよかったと後悔する。今にも熱が出てきそうである。小さい頃、熱を出して寝ているとジュースやおかしを枕元に並べてもらった。「お母さん、病気っておいしいね」。そんな体験をここで突然思い出すなんて、頭の中での混乱ぶりがうかがえるというものだ。
 ゲンペイからは休むことなく次にタイプする文字が無情にも出てくる。パソコンのシゴキかたはすごい、などと感心しながら、その日のレッスンは終わった。手を使うと、指を使うと、ボケないという説があるが、この疲れは何だ。思考回路は滅茶苦茶になり、判断力もにぶっている。これは、「アルツハイマー型パソコン痴呆症」かもしれないぞ。

 カタコト・タイピング

タイピングでの、悪戦苦闘はいまだに続いている。手元のキーボードを見ずに画面だけを見て一〇本の指でレッスン。その技術さえ身につければ作業の能率は上がるし、間違いも減る。そして疲れにくいといわれている。
 がしかし、今の私にはそのすべてが逆である。能率は上がらない。間違いだらけ。そして何よりも疲れがひどい。次々にパソコンのゲンペイちゃんから出題されてくるキーを、必死の思いで追うのだが、入力位置に表示された字を見る気力さえない。タイピング・ソフトのテストの判定には、「なんて、だめなやつ、さいのうなし」などというのがあったりして……。そんな被害妄想にまで取り付かれてしまう。
 これではいけない、元気を出そう。まず疲れをとることだ。それも目の疲れからだと考える。昔から目の疲れには遠くの緑をながめろといわれている。しかし今の都会では緑を期待するのは無理な話だ。ではどうするか。ん? 解決方法は簡単かもしれない。目の前にゲンペイがいるではないか。編集部のK氏が、「そろそろ絵は卒業して……」といって始まったタイピングだが、ここはもう一度その絵に、色に帰ることだ。
 画面いっぱいに緑色を広げ、椅子から少し遠のいて見る。緑色は目に受ける刺激を小さくし、心を安らげるといわれる。パソコンで出した緑色にも同じ効果があるのだろうか。
 もう一度ゲンペイに挑戦していく。しかし事はちっとも前進しない。自分の指の無器用さは、今さら言わなくてもわかっているが、それにしても脳からの命令系統がずさんなのか、一〇本の指はいまだにバラバラ。親指と人差し指と中指の三本は、まずまずのできばえのようには思えるのだが……。
 人間の手の発達ぐあいから考えると、赤ちゃんは、生後四カ月で、気づいたものを手でさわりだすそうだ。生後五カ月で、五本の指を使ってものをつかむ、そして生後七カ月、親指と人差し指と中指の三本だけで、ものをつかめるようになるという。
 なに! これは問題だ。私はまだ生後七カ月の能力しか持ちあわせていないというのか。こんなショックな話はない。青ざめた形相で画面にむかう。あせるな、おちつけ。アッ、またエラーだ。わかってはいるが、ここはあせらずにはいられない。一日も早くこの段階から抜け出したいのだ。なにしろ、私はまだ〇才児なのだから。


著者について
 はら たいら
 高知県生まれ、漫画家。高校卒業後、漫画家を志して上京。辛辣な風刺を効かせた時評漫画で人気を博す。代表作に「ゲバゲバ時評」「モンローちゃん」など。また、「クイズダービー」をはじめ、テレビ、ラジオでも活躍する。現在も雑誌、新聞などで漫画、対談、随筆などを多数連載中。

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「はらたいらのパソコン漫遊記」紹介ページの最終更新日時
2009年7月8日 17:33:04
ID:4
※実際の販売・ダウンロードは『電子書籍パピレス』にて行われます。