出版社/著者からの内容紹介
仕事の「デキる人間」になるためには、枝葉のテクニックだけに終始するのではなく、根っこの部分をもっとしっかりさせる必要があります。不安をやる気に変え、考え方と視点を変える心理技術で、仕事力は飛躍的に伸びます。本書は「頭のいい人間」「仕事のデキる人間」に自己改造していくためのガイドブック。自分の根っこを確かなものにしましょう!
『朝まで生テレビ』『ここがヘンだよ日本人』など、テレビでも若手論客として注目を浴びている和田秀樹の著書「根っこの仕事術」デジタル版が、紙書籍と同時に発売!
抄録(「電子書店パピレス」より)
この不安の渦巻く時代にあって、身につけるべき仕事術とはどのようなものなのでしょうか。いくら仕事をうまくこなすテクニックを身につけたところで、不安にかられて仕事が手につかないようでは、まったく意味がありません。不安な気持ちにどのように対処していくか、そしてどのようにやる気をつくり出していくか。まずは、それが大きな課題だといえるでしょう。
目の前の問題がことさら大きく重く見えるのは人間心理の常です。それで、ものごとの優先順位や重い軽いの判別をつい見誤ってしまうことにもなる。同じように、わるいときやマイナス局面にはおのずと悲観的な材料がたくさん見つかるもので、人はその不安要素にうながされて、いまの状態を性急に変えようとする傾向があります。
つまり変革論がはやるのは多くの人が不安を抱えている時期であり、いま構造改革やリストラの必要性がさかんにいわれ、行われているのはそのためにほかなりません。
負の状態にあるから変えていこう――これはいっけん正しい反応のように見えますが、わるいときの変革がすべて正しいとは限りません。たとえば不況下の構造改革などは、実は心理学的立場から見ると、しないほうがいい可能性が強いのです。少なくともそれは、ことを誤る確率が高い行為といえます。
なぜなら、うつのときにものごとが否定的にしか考えられないように、わるいときにものごとを変えようとすると、必要以上に悲観的になったり視野が狭くなって、冷静な思考や客観的な判断を下しにくくなるからです。もし反省したり行動を起こすのなら、悲観的なとらわれが少なく、比較的冷静な判断や多様な思考が可能になる、いい状態のときや余裕があるときのほうが望ましい。リストラなども、ほんとうは企業の業績がいいときにやっておくべきことです。好景気のときのほうが不要な人材を「調整」する状態をつくりやすいし、リストラされるほうも再就職にさほど困らなくてすむからです。
逆に、いまのようなわるい時期には企業は安易なリストラに走らず、将来に備えてじっくり人を育てるべきであり、設備投資などもコストが安くてすむ不況期に行ったほうが有利かもしれません。なかなかそう冷静な判断や行動がとれないのは、他にやむをえない事情もあるでしょうが、心理的には、そのときどきの状況に私たちの思考が縛られてしまうことに大きな要因があります。
いまリストラに熱心な企業が、バブル景気のときに何をしていたか。大半が過剰人材を抱え、設備投資もバンバン行っていたはずです。きびしい言い方かもしれませんが、多くの企業がいいときには浮かれ、わるくなるとうろたえている。心理学的に見るとこの逆、いいときにこそ次に備え、わるいときに足もとを固めるのが理想なのですが、多くの経営者がそれを理性では承知していながら、現実には反対の行動しかとれていません。
しかし、それもまた認知のゆがみのなせるわざで、心理学的には致しかたない行為といえます。人間心理には「わるいときの悲観論といいときの楽観論はどっちも過剰になる」ということがよく知られています。つまり、わるいときにはものごとが必要以上に悲観的に見え、いいときには必要以上に楽観的に見える。程度の差はあっても、だれにもこういう心理的傾向があります。
いまや終身雇用や年功序列システムは企業収益の足を引っ張る悪者のように見られていますが、それだって、いまが不景気だからかもしれません。現に景気のいいときには、それは日本的経営の成功要因としておおいにもてはやされていたではないですか。もし、そのよしあしを議論したり見直ししたりするのなら、景気のいいときにすべきであったと私は思います。
著者について
和田 秀樹(わだ ひでき)
一九六○年大阪府生まれ。八五年に東京大学医学部卒業後、東京大学附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は精神科医。
川崎幸病院精神科コンサルタント、一橋大学経済学部非常勤講師(現代経済学)。
主な著書に『大人のための勉強法』『大人のための勉強法――パワーアップ編』(ともにPHP新書)、『40歳から何をどう勉強するか』(講談社)、『痛快!心理学』(集英社インターナショナル)他、多数。