出版社/著者からの内容紹介
話し方一つで人間関係が変わる! 円滑な人間関係を築くには、相手とのコミュニケーションが不可欠であり、そのカギは話し方にある。では、効果的な話し方のコツとは。「話し方の基本は相手を理解することにあり、気持ちのよい人間関係を持とう、という意思の持続による」と著者はいう。本書は、心のあり方を軸に、さまざまな状況に応じた挨拶や返事の仕方から、会議での発言法、司会者の自覚までを豊富な事例とエピソードを基に懇切丁寧に解説する。ビジネスからプライベートまで話しベタに悩む人でも自由自在に活用できる格好の手引書。
抄録(「電子書店パピレス」より)
相手を尊重するものの言い方
言い方は話し方の全部ではありません。話し方は人間性そのものにかかわる問題ですが、言い方は、話し方のなかのひとつの技能だと、わたくしは考えています。じょうずに話をするには、ことばをうまくあやつればよいのだと、あっさり考えている人がいますが、そうではないのです。ああだ、こうだと、ことば巧みに話してみても、相手がうなずく気にならなければなにもならないので、効果という点から考えると、言い方はじょうずだが、話し方は落第です。
話術とか弁論術とかいって、じょうずな言いまわしの研究がありますが、それは技術で人の心をとらえられるという立場ですから、わたくしは賛成しかねます。しかし、言い方の問題は話し方のなかのもっとも重要な問題であることには変わりありません。言わなければ話ははじまらないのですから。
言い方はテクニックの問題ではなく、人間性の問題であるという立場で考えてゆきたいと思います。人生は舞台や演壇よりも広いのです。現実の話の場の条件や状態は千差万別でつねに動いています。したがって言い方には固定的なものはないと考えてよいでしょう。だからといって、無規則、無原則というものでもない。原則はあると知るべきです。それは人間性に基づいた原則です。人間性を侵すものは原則として悪です。人間性を高めるものは善です。相手を尊重するということから話し方ははじまるのですから、次のことを心がけてください。
まず肯定的な心でものを言う。否定的な言い方は相手の自尊心を傷つけ、反発を招くことが多いのです。
「これっぽちでは、しようがないじゃないか。もっとやれ」
と否定的にきめつける。これでは、
「せっかく一所懸命やったのに、これっぽちとはなんだ」
と反発されてしまいます。
「ずいぶんやったなあ、もう少しやって休もう」
と肯定的に言えば、「ずいぶんやったなあ」で、はたらきを認めてもらえたから、もう少しやろうと言われても、腹はたちません。
いまの短い例のなかにどういう要素が含まれているでしょうか。
一 肯定語をつかう
二 相手の価値を認める
三 相手の立場を考える
分析的に考えれば、こうした三つの要素があることに気づかれるでしょう。
わたくしたちはとかく否定的なものの言い方をすることが多いようです。人間は論理を知る動物であるとともに、感情の動物です。偏見にみち、誇りと虚栄心にもえている動物です。他人を非難したり、詰問したりすれば、たとえどんなに善意をもって正しいことを言ったとしても、相手から不愉快がられ、うらまれるのがオチです。他人を否定することならできる。自分をおさえて、相手を理解し肯定するのはむずかしい。しかしそのように努力すれば、相手も自然と自分を理解し、言うことを聞きいれてくれるものです
著者について
江木 武彦(えぎ たけひこ)
1910年生まれ。東大卒業。1949年、言論科学研究所を設立し、社会党員の言論教育に活躍。1955年、日本で最初の「話し方教室」を開設。以来、多くの話し方教室のインストラクターを養成している。