出版社/著者からの内容紹介
びくともしない建物を築くにはしっかりとした土台が必要なように、揺るぎなく成長し、社会に貢献する企業に導くのにも経営の基本を守る必要がある。「熱意こそが道を開く」「道行く人はみなお客様」など、本書で語られていることは当たり前のことばかりである。しかし、この当たり前の行動こそが経営の基本であり、小さな町工場を松下電器に育て上げた原点であった。厳しい経済環境にある今、経営者に勇気と希望を与えてくれる一冊。
抄録(「電子書店パピレス」より)
論を言うよりまず実践
松下幸之助は特別に経営の勉強をしたわけでもなく、それどころか小学校中退であった。とにかく商売を実践し、行動するところから始まった。それが結果的には、一人の偉大な思想家・理論家を生んだ。
理論とは、結局実践の中から生まれてくるものである。松下を見ているとそれがよくわかる。とりわけ経営というものは、頭の中で一つの論を立ててみても、それだけではとうてい成功させることはできない。実際に経営というものと格闘しながら、試行錯誤を重ね、実践を重ねて成功の道、経営発展の道を見つけだすしかない。実践の伴わない論は、文字通り机上の空論にすぎない。
私はしばしば、経営を成功させるためには、二つの要因があると述べている。一つは「目に見える要因」、もう一つは「目に見えない要因」である。
目に見える要因というのは、言ってみればマニュアル化できるものである。技術や工場、組織や体制。それらはある程度マニュアル化して、その通りにやっていけばいい。
要するに、第三者が再現することができるものである。この目に見える要因とは、どちらかといえば「理論」あるいは「理屈」の世界だと言うことができる。
一方、目に見えない要因というのは、たとえば哲学、理念である。身近なものでは、ものの言いようや考え方、雰囲気といったものもある。これは第三者が真似しようとしても、簡単に真似することができないし、コピーしようとしてもコピーすることができない性質のものである。アメリカでは成功しなかったQC(品質管理)が日本で成功した理由は、工場の現場の人たちがお互いに声をかけあったからであった。自分がうまくできても隣の人がうまくいかないと「一緒に考えましょう」と助けあった。それはもちろんマニュアルには書いてない。目に見えない要因の効用である。
この二つの要因のどちらが大事かというと、もちろん両方とも大事ではあるが、ウェイトから言えば六対四で「目に見えない要因」が経営においては非常に重要である。
しかもこれは簡単に真似できない類のものであるから、一人一人が自修自得で身につける以外にない。経営には、六対四の割合でそういう目に見えない要因、すなわち実践するところから学びとる以外に、どうしようもない部分があるのだということを知っていなければならない。
ある会社の社長が「まず知恵を出せ、知恵なき者は汗を出せ、それができない者は去れ」という言葉をモットーにしていた。
それを聞いた私は「なかなかいい言葉ですね」と松下に言ったことがある。平日の住居がわりに使用していた松下病院の四階の部屋で、夏の暑い頃であった。しかし松下はベッドの上に座ったまま、私の話を聞くと首をちょっとかしげて「うーん、わしはその会社はあかんと思うな」と答えた。
「わしやったら、『まず汗を出せ、汗の中から知恵を出せ、それができない者は去れ』と、こう言うな」と言ったことを、印象深く覚えている。なぜならその会社が、間もなく本当に倒産してしまったからだ。
経営のコツは、やはり実践する中から、そして汗の中から生み出されてくるものである。理屈の中から生み出されてはこない。それが証拠に、ある有名な経営学者に会社を任せたら倒産させてしまったという有名な例がある。
「塩の辛さ、砂糖の甘さというものは、何十回、何百回教えられても、ほんとうにはわからんやろ。なめてみて、初めてわかるものや。なめてみれば、すぐわかる」と松下はよく言っていた。
論を言うより、実践する、汗を流す、汗の中から知恵を出す。その知恵を自問自答して反省し、さらなる知恵へと高めていく。その知恵をまとめれば自ずと論になる。これが松下幸之助の実践経営学の基本であった。
そのような流れを実践してこそ、初めて自分自身の成長と、会社の発展がある。
だから経営をしていく中で、ときには不満や泣き言を言いたいことが出てくるだろう。しかし、とにかくやってみて、実際にどう思うか、どう感ずるかがとても大事ではないだろうか。
そこに一つの、理論では理解できないような感覚や驚きが生まれてくる。特に部下育成など、相手が人間である場合、理論はほとんど役に立たない。みずから実践した中で体得した知恵や感覚のみが頼りになる。それなくして経営に成功することは不可能であると言っていい。
まず実践。いかなる時代においても、いかなる仕事においても出発点はそれである。
著者について
江口 克彦(えぐち かつひこ)
PHP研究所代表取締役副社長。
1940年、名古屋生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。松下電器産業株式会社に入社後、PHP研究所常務、専務等を経て、1994年に同研究所副社長に就任。松下幸之助のもとで22年間、直接指導を受ける。
著書に、「成功する経営 失敗する経営」松下幸之助の箴言 人生と経営この素晴らしきもの」「ヨコ型時代の経営学 人徳経営のすすめ」などがある。
基本が身についているか──まえがきに代えて
いい物を安くたくさん水道哲学
論を言うよりまず実践
反省し感動する人は成長する
人間観のない経営者は一流にはなれぬ
本業に徹せよ 徹せざれば会社は滅びる
平凡にやるべきことをやるが商道
止めを刺さない仕事はしないと同じ
知恵集め 力集めて全員経営
利益は社会貢献した報酬
抜くな 私憤で怒りの刃
流転変転すべて発展
拝む心は豊かな心
私もあなたもみんなで繁栄
感動を与えられずに発展なし
世の中の判断 つねに正しい判断
尋ねて聞いて衆知の経営
礼は人の道 商いの道
即断即決 仕事の決め手
つねにまず 正しさとは何かを考えよ
熱意こそが道を開く
なによりも物づくりより人づくり
乱世忘れずが日々の心がけ
無理するな ゆとりを持ってダム経営
運命に従いながら努力せよ
一日の遅れは一年の遅れ
のんびりと心許して遊んでならぬ
同じ人を集めるな 個性を押しつぶすな
苦境のときこそ動ぜぬ心
約束をきっちり守って効率経営
まく種がなければ決して実もならぬ
経営理念は悟りなり
不況よし 知恵の出しどき工夫のしどき
ここなりと自分で気づけ 経営のコツ
偉くなるほど愛嬌が大事
適正利益 しっかりあげて しっかり納税
あくまでも人間のための技術開発
サービスの心は思いやりの心
基本理念を曲げるな 守れ 実行せよ
ゆっくり前進 しっかり歩こう
面子 見栄より会社の発展
道ゆく人はみなお客さま
社員稼業 どんな仕事も自分が店主
笑顔のサービスが最高のサービス
人は誰でも偉大な王者
儲けることより まず世と人のため
宣伝は良品知らせるための義務
素直な心がすべての基本
運の強さは肯定と努力から
あとがき