出版社/著者からの内容紹介
人気アイドル、KinKi Kidsの堂本剛と堂本光一の、生い立ちから思春期までを実話をもとに小説化! ファンなら知りたい二人の子供時代が生き生きと描かれている。
抄録(「電子書店パピレス」より)
一九九〇年 夏 光一
光一は小学校六年生になった。夏休みのある日、大阪弁天町に「プールズ」という名の新しいプールがオープンしたので、みんなと行くことになった。珍しく光一も参加することにしたのは、自分の秘密を打ち明けたかったからだ。
その秘密とは、ジャニーズ事務所に入ったことである。最初は、なかなか切り出すことができず、話をしたのは泳ぎ疲れた帰り道でのことだった。
「ぼく、ジャニーズに入ってん」
ポツリ、と光一がもらした。
「エッ!」
「ウソー!」
「マジ〜!?」
人それぞれに反応は違ったが、彼らの驚きは共通していた。光一は、焦る友達を前に、少しずつ話し始めた。
「お姉ちゃんは、何でそんな勝手なことをするねん!」
温厚な光一が、声を荒げて姉の光子に食ってかかった。彼女が光一に黙って、ジャニーズに応募してしまったからだ。写真とオーディション申込用紙を送った、と聞かされたのは、応募してしばらく経ってからのことである。
「ぼくは、自分のやりたいことをやるんや。お姉ちゃんの奴隷とちゃうで。どうせ、ヒガシのサインでも欲しいんやろ。ぼくは、絶対に、イヤやで!」
「こうちゃん、お姉ちゃんかて、そんなつもりで出したんと違う。こうちゃんなら、ジャニーズでやっていけると思ったからよ」
母が光一をいさめた。
「ごめんね。そやけど、悪気はなかったんよ。ただね、お母さんが言うように、こうちゃんならジャニーズで通用すると思ったの」
光子からこのように謝られて、光一はビックリした。六歳年上と言うこともあって、彼は姉に頭が上がらなかったからだ。それで、つい、
「もうええわ。どっちにしても、ぼくは行かへんもん」
そう言って、居間を離れた。母と姉はまだ話しているらしく、時折ジャニーズとかヒガシ、光GENJIといった言葉が漏れ聞こえてくる。
光一は自室のベッドに寝転がって、「絶対に行かへんど!」と、一人叫んでいた。
それからしばらくたったある昼下がり、ジャニーズ事務所から電話がかかってきた。
「横浜アリーナで、光GENJIのコンサートがあるので、一度観にきませんか」
事務所の人の誘いに、正直、、光一の心は動いた。
「観るだけやったら、別にかまへんやないか」
「イヤ」と言う自分と、ちょっとだけ観たいという自分がいて、光一は決意した。
「観に行きます!」
一九九〇年 夏 剛
奈良で、一人の少年が、芦屋の光一と同様、姉の宏美に腹を立てていた。
「ぼくのことを、何やと思うてるねん、お姉ちゃんは!」
宏美は黙って、うつむいていた。傍らで母が、オロオロしていたが、剛は怒り続けた。
「お母ちゃんが、勉強せなあかん言うたからアカデミーを辞めたんは知ってるやんか。もし通ったって、ぼくは東京へ行かへんよ」
やっと母が、口を開いた。
「私かて、反対です。東京になんかやりません。剛はこれから勉強せなあかん。私立に行くんなら、大変なのよ。まだ中学生にもなっていないのに、ジャニーズなんて、お話にもなりません!」
普段はテレビにジャニーズのタレントが映ると、一番大騒ぎをしているのが母親だった。しかし、趣味はあくまで趣味。ことが、大事な一人息子のことともなれば、素敵なジャニーズなどどこかへ行ってしまっていた。
剛には、中学校でバスケットボール部に入り、将来は一流選手になるという夢があった。それを、勝手な姉に邪魔されたくはなかった。
「ごめんね。そやけど、私、剛君は北島三郎の舞台より、ジャニーズの舞台に向いてると今でも思ってる」
素直に謝られると、怒りの持って行き場がなくなって、
「もうええ!」
と捨てぜりふを残して、外へ飛び出した。そして、マウンテン・バイクにまたがると、あてもなく走り出していた。耳元で、風を切る音が聞こえる。走っているうちに、
「お姉ちゃんにきつく言い過ぎたなぁ」
と後悔していた。
姉弟喧嘩も過去のことになったある日のことだった。
「東京のジャニーズ事務所です。光GENJIのコンサートが横浜アリーナでありますので、観にこられませんか?」
ジャニーズ事務所から、誘いの電話がかかってきた。ついこの間、姉に向かって怒っていたはずの剛だったのに、光GENJIと聞いた瞬間、電話口で叫んでいた。
「行きまーす!」
著者について
西牟婁 秋生(にしむろ あきお)
和歌山県生まれ。週刊誌記者を経て、フリーランサーに。『256ページの絶叫』などゴースト作品多数。
第一章 剛と光一 はばたき
一九八八年 夏 光一
一九八八年 夏 剛
一九八七年 春 光一
一九八七年 春 剛
一九八八年 冬 光一
一九八九年 秋 剛
一九九〇年 夏 光一
一九九〇年 夏 剛
一九九〇年 横浜アリーナ 剛と光一
第二章 剛と光一 飛翔
一九九〇年 秋 光一
一九九〇年 秋 剛
一九九〇年 夏 光一
一九九二年 春 剛
一九九三年 春 光一
一九九三年 春 剛
一九九四年 夏 光一
一九九三年 春 剛
一九九三年 秋 光一
一九九三年 秋 剛
一九九三年 秋 光一
一九九四年 春 剛
一九九四年 春 光一
一九九五年 春 剛
一九九八年 春 剛と光一