出版社/著者からの内容紹介
90年代後半、大手流通会社の花形である宣伝部を辞めて20代で独立、時代の流れを敏感にキャッチして独学でWebデザイナーに。現在デザイン会社「ラナデザインアソシエイツ」の経営者として多忙ながらも充実した日々を過ごす著者が、Webデザイナーへの道のりやWeb制作現場での実体験を生き生きと語ります。Webデザインに興味のある人、独立志向の人すべてに贈る一冊。
抄録(「電子書店パピレス」より)
●やんちゃな子供時代
現在はウェブデザイナーでありながら、取締役副社長というポジションでもあります。私が経営者になるなんて、本人はもちろん両親も思ってもいなかったことでしょう。友達や知り合いにお手本となる人がいたわけでもありませんし、父は学者、母は専業主婦という、どちらかというとお堅い家庭で育ちました。共通点があるとすれば、父の仕事ぶりでしょうか。好きな研究一筋に生きてきて、定年退官した今もますます精力的に仕事をこなしています。ジャンルは違いますが、「これだ!」と思ったらつきつめてみないと気がすまない性格は父親譲りなのだと思います。
また、兄と弟という男兄弟に囲まれて育ったため、ピアノやままごとなど女の子らしい遊びの一方で、自転車に乗り、キャッチボールをし、泥んこ遊びに明け暮れるという、かなりやんちゃな子供時代を過ごしました。半ズボンで毎日生傷を作って帰ってくる私に両親はあきれていたのではないかと思います。
今ではもちろん生傷は作りませんが、私の中に女性的な部分と男まさりな部分が同居しているように感じることがあるのは、子供の頃からのこういった環境が影響しているのかもしれません。また、兄弟以外にも近所には同年代の子供たちがたくさんいましたし、周囲は自然にあふれていましたので、遊びにも友達にも事欠きませんでした。そういうところから、人が好きで外向的な性格になっていったのかもしれません。
●デザイナーを目指して
「デザイナーになりたい」と思ったのは高校の時だったと思います。最初は無謀にも父と同じジャンルを目指し理工系の勉強をしていたのですが、私には難しすぎて挫折。次に「スタイリスト」か「インテリアデザイナー」になろうと急きょ方向転換をしました。といっても突然頭に浮かんだわけではなく、洋服のコーディネートを考えたり、部屋の模様替えをしたりという、いろいろなものをアレンジしたり作ることがとても好きだったのです。
こういう時にあまりぐずぐず悩まないのが私の性格です。こっちがダメだったら、次! という割り切りの良さはこのころから今も変わりません。さっそく本屋さんに行って「スタイリストになるには」といった本を買ってきて必死に読んだ記憶があります。この本もウェブデザイナーを目指す方に買っていただきたいと思っていますが、果たして読んでくださった方のお役に立つかどうか少し不安でもあります。
さて、とりあえず「デザイン」というものを学ぼうと大学選びをしますが、最初から美大を目指すべくデッサンの勉強をしていたわけではなかったので、なかなか受かりそうな大学がありませんでした。「デザインなんてあなたにできるの?」といぶかる両親を説得し、結局、工学部の工業意匠学科に行くことにしました。「意匠」って「デザイン」て意味だし……くらいの軽い選択でした。「工業意匠」というのは、「インダストリアルデザイン」といった方がわかりやすいでしょうか。「自己表現としてのアート」ではなく「工業製品としてのデザイン」「商業ベースとして流通するデザイン」がテーマです。
●ウェブデザイナーへの布石
ところがそういった「工業的なデザイン」を勉強するということを頭では理解していても、さすがに最初の授業で目の前に木の板を出され、「これをカンナで削りなさい」といわれた時には驚きました。「入学までに用意するものリスト」に、「鉋(かんな)」と「玄能(げんのう)」という字を見た時からいやな予感はしていたのですが……。金槌(かなづち)のことを玄能というのもこの時初めて知りました。
しかし、インダストリアルデザインは、まず素材を知るところから始まるのです。製品を作るためには、その材料となる素材がどんな性質を持っているかということを最初に理解しなくてはなりません。素材の選び方ひとつが、製品の実用性や使いやすさを左右します。木工だけではなく、金属や樹脂などさまざまな素材の加工を行い、その素材の特長や加工法などを学びました。
そういった実習は、今私が行っているウェブデザインとは直接関係ないように思われるかもしれません。しかし、たとえジャンルが違っても、「モノづくり」という点において根本は同じだと思うのです。「どんな材料をどうやって加工して、どんなものに仕上げるのか」「使いやすいものに仕上げるには、どんな加工を施したらいいのか」。私にとってのデザインというのは常に現実に即してあるもので、現実との関係をどう捉えるかということなのです。そういった考え方は、大学時代の経験で身に付いたものだと思っています。
また、インテリアや建築などに興味があったのは、もともと人と人とが接する場所に興味があったからでした。とある場所を訪れた時、人はそこで何を感じるのか、人が過ごす時間や空間をどんな風に提供しようか、こういう仕掛けをしたら、そこを訪れた人はこんなふうに反応するんじゃないか……といったことを考えるのが好きでした。この点もウェブデザインへの興味に通じるところです。ユーザーがサイトにやってきて、その中をあちこち歩き回り、テキストを読んだり画像を楽しんだりした後、いろいろなことを感じながら帰っていく……。そういった人の動きをいろいろとシミュレーションすることにおもしろさを感じるのです。
サイトを訪れた方には新鮮な驚きを感じてほしいと思いますし、居心地よく過ごしてほしいと思っています。そのために、知恵を絞り感性をはたらかせて、さまざまな仕掛けや使い勝手を考えます。それは、ウェブデザインにもインテリアデザインにも共通するところだと思います。
*この続きは製品版でお楽しみください。
著者について
堀田 理佳(ほった りか)
1969年、静岡県生まれ。92年、東北工業大学工学部工業意匠学科卒。同年(株)パルコ入社、環境デザイン部、宣伝部を経て、97年、ウェブデザイナーとして独立。同年、木下謙一氏と共同でラナデザインアソシエイツ設立。99年3月に有限会社、2001年1月に株式会社へ組織変更、現在(株)ラナデザインアソシエイツ代表取締役副社長。